薄毛の範囲が広くなると、内服薬や外用薬の効果も得にくくなり、最後の砦とも言える「毛根移植(自毛植毛)」を考える方が増えてきます。
とはいえ、毛根移植は公的医療保険の適用外で高額になる外科手術です。また、自毛植毛をしてから悲惨な経過を辿り、10年後に後悔するという方も少なくありません。
本記事では、毛根移植にかかる費用や自毛植毛のデメリット、失敗するパターンをご紹介していきます。
毛根移植とは?
毛根移植とは、自分の側頭部や後頭部から採取した毛根を、傷跡や薄毛になっている場所へ移植する手法を指します。
自身の毛根を移植することで、半永久的に髪の毛が生え続けるとも言われる毛根移植とは、どのような仕組みなのかを解説していきましょう。
毛根移植に自分の毛根を使う理由
なぜ側頭部や後頭部から、生え際や頭頂部など薄毛になった場所に毛根を移植するのかというと、側頭部や後頭部の毛根はAGAの原因となるジヒドロテストステロンの影響を受けにくいからです。
側頭部や後頭部の毛根は生え際や頭頂部に移植されても、AGAの影響を受けにくい特長を持ったまま髪の毛を作る細胞が働くようになります。
また、毛根移植は自分の細胞を利用するため、拒絶反応が起こりにくいとされています。
日本皮膚科学会が発表している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも、AGAには行うよう勧める、FPHLには行ってもよいとしているほど、比較的安全性が高い治療法です。
毛根移植の方法は3種類
いわゆる自毛植毛のことで、毛根移植を行うクリニックによってさまざまな名前が付けられていますが、大きく分けて3つの術式が使われています。
現在の主流となっている、毛根移植(自毛植毛)で使われている3つの術式とデメリットを解説していきましょう。
自毛植毛(毛根移植)の術式①Choi(ニードル)法
Choi(ニードル)法は、1992年に韓国で生まれた自毛植毛法です。
専用の針で株(毛包)を1つづつ採取し毛根移植を行うため、生え際などの細い髪の毛を自然に見せたい方に向いています。
Choi法のデメリットは、定着率が低い(60%以上)ことと高額な費用が掛かること、そして医師の技術が高くないと失敗しやすいことです。
また、日本でChoi法を行っているクリニックが少ない、手術にかかる時間が長い、毛根移植は細い髪の毛に限られるというデメリットもあります。
自毛植毛(毛根移植)の術式②FUT法
1995年頃に誕生したのが、現在世界的に主流となっているFUT法です。
側頭部や後頭部から短冊状に毛根を採取し毛包ごとに切り分けた株を、切り込みを入れた場所に移植していきます。
一度に採取できる株(毛包)が多く、費用が比較的安価ではあるものの、採取した場所に傷が残ることや体への負担が大きく、痛みが残りやすいことがデメリットです。
また、毛包ごとに切り分ける際に傷がつくと定着率が下がりますし、切り分けには電子顕微鏡が必要なため、設備が整っている限られたクリニックでしか毛根移植を行えません。
自毛植毛(毛根移植)の術式③FUE法
最後にご紹介するのは、日本で主流になっているメスを使わないFUE法です。
Choi(ニードル)法と似ていますが、針ではなく専用のパンチを使い株(毛包)を1つづつ採取し、切り込みを入れた場所に移植していきます。
株分けをする必要がないため定着率はFUT法よりも高いですが、側頭部や後頭部に小さな点状の傷跡が残る、生涯で採取できる毛包の数がFUTに比べて少ないことがデメリットです。
この他にも、ショックロスと言われる採取箇所の周囲が薄毛になること、一度に大量の毛根移植ができないということもデメリットといえるでしょう。
毛根移植の前に自分の発毛力を高めよう
毛根移植(自毛植毛)は外科手術のひとつで、万が一失敗されるようなことがあると、その部分の毛根からは生涯髪の毛が生えなくなります。また、植毛したばかりの見た目が悲惨で外出できないという方もいらっしゃいます。
薄毛治療をしても効果がなかったという方でも、ご自身の発毛力を高めれば、自毛を生やすことは可能です!
当院では、AGA治療薬の効果がなかった方や長年悩んだ方でも自分の髪の毛を取り戻しています。
ぜひ一度、薄毛の専門家まで相談してください。そして毛根移植よりも安全に自毛を生やしましょう!
毛根移植(自毛植毛)にかかる費用はいくら?
毛根移植(自毛植毛)の費用は移植する株(毛包)の数だけで決まるものではありません。医療機関によっては、血液検査費用や基本治療費、処置代や処方される薬の費用も含まれます。
また、術式やドナーとなる毛包を採取する場所を刈り上げるかによっても、費用が変わってくるものです。
M字やつむじなどの場所ごとに、10件のクリニックから平均した毛根移植にかかる費用がいくらかを解説いたします。また、以下の金額は株数の費用のみを算出しているため、基本治療費や検査費用は別途かかります。
M字部分の毛根移植にかかる費用はいくら?
まずは額の剃り込み部分が薄毛になる、いわゆるM字ハゲへの毛根移植にかかる費用です。
剃り込み具合が浅い方なら400~600株程度が必要になり、大きく後退している場合は800~1,000株以上必要になるケースもあります。
医療機関によっては、別途基本治療費や検査費用などがかかりますが、おおよその費用は以下の表をご覧ください。
術式 | 浅いM字(500株) | 深いM字(800株) |
---|---|---|
Choi法 | 約275,000円 | 約440,000円 |
FUT法 | 約478,500円 | 約765,600円 |
FUE法(刈り上げる) | 約551,500円 | 約882,400円 |
FUE法(刈り上げない) | 約786,500円 | 約1,258,400円 |
生え際の毛根移植にかかる費用はいくら?
続いて生え際が後退し、おでこが広くなったという方が毛根移植する場合の費用を解説します。
生え際は、2~4cm程度下げる場合で1,000株程度は必要です。かなり後退している方が5cm以上生え際のラインを下げたいとなると、倍以上の株数が必要です。
生え際に自毛植毛する場合の費用も、株(毛包)の金額のみを算出したため、基本治療費や検査費用が別途かかるクリニックもあります。
術式 | 生え際(1,000株) |
---|---|
Choi法 | 約550,000円 |
FUT法 | 約813,000円 |
FUE法(刈り上げる) | 約1,103,000円 |
FUE法(刈り上げない) | 約1,573,000円 |
つむじの毛根移植にかかる費用はいくら?
つむじ(O字ハゲ)の毛根移植にかかる費用は、頭皮の透け具合と範囲の広さで決まります。
直径が5cm程度だと500株ほど、6cmを超える場合は800~1,000株、10cm以上では2,000~2,500株以上が必要です。
つむじへの毛根移植も、医療機関ごとに基本治療費や検査費用などが別途かかることがあります。
術式 | つむじ(1,000株) |
---|---|
Choi法 | 約550,000円 |
FUT法 | 約813,000円 |
FUE法(刈り上げる) | 約1,103,000円 |
FUE法(刈り上げない) | 約1,573,000円 |
毛根移植は10年後に後悔する?
さまざまなクリニックでは、10年後の髪の毛の状態を見据えた毛根移植を行っている…というようなことが記載されています。
もちろん、毛根移植(自毛植毛)を行うのであれば、後悔したくありませんし、ましてや高額な費用が掛かるのですから、失敗などは言語道断でしょう。
しかし、実際に毛根移植を行ってから10年後までに後悔している方は意外に多いので、毛根移植を考えている方は失敗例やデメリットがあることを覚えておいてください。
毛根移植(自毛植毛)で失敗・後悔するパターン①1度の植毛で終わらせようとする
1つ目の毛根移植(自毛植毛)で失敗・10年後に後悔するパターンは、1度の毛根移植で終わらせようとするものです。
毛根移植は自分の側頭部や後頭部からドナー(毛包)を採取しますが、大量に必要な場合は1度に採取できません。
また、少量の採取でまかなえたとしても、自毛植毛した箇所の周囲が薄毛になった場合、悲惨な経過をたどるケースも多いです。
毛根移植(自毛植毛)で失敗・後悔するパターン②移植した株(毛包)が定着しない
2つ目の毛根移植(自毛植毛)で失敗・10年後に後悔するパターンは、移植した株(毛包)が定着せず抜け落ちて悲惨な状態になってしまうことです。
手術を担当する医師の技術、採取した株の管理などでも左右されますが、本人の血流や栄養状態、毛包の丈夫さも関係しています。
毛根移植は100%定着して成功するということはありません。また、定着率の高さが95%などと記載している場合でも、あまり期待せず60~70%が定着すればよいと考えておくと良いでしょう。
毛根移植(自毛植毛)で失敗・後悔するパターン③採取・移植した場所に傷跡が残る
毛根移植(自毛植毛)で失敗・10年後に後悔するパターン、3つ目はドナーを採取した場所や移植した場所に傷跡が残るというものです。
FUT法では横に長い短冊状にドナーを採取し、FUE法やChoi法では円形に小さく採取するため、髪の毛を短くすると傷跡が目立ってしまいます。
傷になった場所には毛根がないので髪の毛が生えず、頭皮がでこぼこになるので10年後に薄毛が進行した時に後悔するケースがあるということを覚えておいてください。
毛根移植(自毛植毛)で失敗・後悔するパターン④不自然な仕上がりになった
4つ目の毛根移植(自毛植毛)で失敗・10年後に後悔するパターンは、髪の毛が生える向きや毛量などの仕上がりが不自然になるというものです。
特に額の生え際やつむじは、一定の方向ではなく斜めに髪の毛の流れを作らなくてはなりません。
そのため、生え際やつむじへ毛根移植したい場合は、高い技術をもつ医師・医療機関を選ぶ必要があります。
また、生え際が真っ直ぐやギザギザだと不自然になり、自毛植毛したことが明らかで悲惨だったという方もいます。
毛根移植(自毛植毛)で失敗・後悔するパターン⑤移植した場所の周囲が薄毛になる
最後にお伝えする毛根移植(自毛植毛)で失敗・10年後に後悔するパターンは、毛根移植した場所の周囲が薄毛になって離れ小島ができてしまうというものです。
移植した毛根はAGAの影響を受けにくいですが、周囲の毛根はAGAが進行すると薄毛になり悲惨な見た目になってしまう可能性があります。
そのため、多くのクリニックではAGAの薬を処方したり、頭皮ケアを行うことを推奨しています。また、毛根移植は周囲の毛量と合わせ数回に分けて行わないと、離れ小島ができて10年後に後悔するかもしれません。
毛根移植にかかる費用は?10年後に後悔する人が多い自毛植毛の失敗例まとめ
今回は、毛根移植(自毛植毛)の費用や10年後に後悔する失敗例について解説いたしました。
毛根移植は、基本治療費と移植する株(毛包)×本数によって費用が変わります。
移植したい箇所の広さによって必要な株数が変わるため、範囲が狭ければ約30万円、広ければ100万円以上の費用が必要です。
また、医者の技術力や数年~10年後にAGAが進行してしまうなど、失敗・後悔したと感じることもあるので、毛根移植をするかは慎重に考えましょう。
悲惨な経過を辿りたくないという方は、ご自身の発毛力を高めるのが一番失敗しない方法です。
そのためにも、頭皮や毛根が改善可能な状態かを判断するために、まずは専門家へご相談くださいませ。